上を向いて歩いてみれば(2024年01月23日)

上を向いて歩いてみれば(2024年01月23日)

先日、ヴィム・ヴェンダース監督の新作映画
『パーフェクト・デイズ』を観てきました。

渋谷区内各地に点在する、有名デザイナー・建築家が手がけた共同トイレ。
その清掃を生業とする人の日常を描いた映画です。
昨年のカンヌ映画祭で、役所広司が主演男優賞を受賞したことでも話題になりましたね。

主人公の生活の大半は「いつものこと」で占められています。
過不足のない、ミニマルでperfectな1日がくり返されます。
けれど、まったく同じ日はあるはずもなく――
同じようでいて、それぞれに違う日々の重なりを追ううちに
Perfectの意味が違って見えてくるような、不思議な味わいの映画でした。

さて、主人公がいつも決まってすることのひとつに
早朝、家を出るときに空を見上げるという動作があります。

「見上げる動作」は、映画の中で何度も出てきます。
押上付近の自宅から仕事場に向かう車内ではスカイツリーを、
昼休みを過ごす公園では大木を見上げます。
ふとした合間に、彼の目線は空に向かうことが多いのです。

映画館を出た私は思いました。「上を向いて歩いてみよう」と。
仕事のときも、仕事を離れたときでさえ、
手元にばかり目を向けがちな毎日に
少し変化をつけたくなったのです。

通勤途中、上を向いて目に入るものといえば、だいたいが建物や人工的な構造物です。
味気ないと感じる人もいるかもしれませんが、私の心は妙に浮き立ちました。

というのも、脳内に某長編漫画&アニメ作品が巣食っている私の目には
あらゆるモノがじっと動かぬ巨人たちに見えてきたからです。

「あの建物の高さは何メートルか?」とスマホに尋ねたり、
階数を数えては、高さを推測したりする日々が始まりました。

ちなみに、神保町からほど近い東京ドームラクーアの観覧車の高さは60メートル。
超大型巨人とほぼ同じです。
観覧車に乗れば、超大型巨人の視界を追体験できるわけです。

オフィスの窓からも望める明治大学タワーの高さは120メートル。
かの(……といわれても「?」かもしれませんが)
ロッドレイス巨人とほぼ同じ高さです。

たいていの巨人は弊社が入居しているビルより背が低く
意外にとっつきやすい感じもいたします。

映画のなかで主人公は、世界はいくつもある、
つながってみえても、つながっていない――
といったことを話しておりましたが、
それぞれの世界が頭の中で重なると、違う風景がみえてきます。
それはとても楽しいことだと、私は思うのです。

AY